開戸日記

カクコト・イイコト

ユニコーン企業となったウェブメディア・コンテンツ制作を行うスタートアップ企業4社まとめ

未上場企業でありながら10億ドル以上の企業価値を誇るスタートアップ企業を、業界ではユニコーン企業」と評しています。

そして、そんなユニコーン企業の多くはシェアリングエコノミーだったり、AIだったり、クラウドだったり、ビックデータだったり、ブロックチェーンだったり、自動運転だったりと主にガッツリとしたテクノロジー企業が中心となります。

そんな中一見してウェブメディアやコンテンツ制作を中心に行う企業でユニコーン企業に上り詰めたのはあまり聞きません。

というよりいるのか?ハードルが低い分、多くの企業が参入し、多くの大企業が占めている業界。AIでレコメンドするのならば分かりますが、独自でコンテンツを制作してオリジナルの記事を執筆してユニコーン企業となったのは中々見当たりません。

そこで今回はウェブメディアやコンテンツ制作を中心に行うスタートアップ企業が晴れてユニコーン企業に上り詰めた企業をまとめてみました。


VICE

設立日:1994年
公式サイト:VICE

日本ではあまり目立たないけれど海外では絶賛ミレニアル世代に受けているメディア「VICE」。

なんと設立は1994年と思っていた以上に老舗のメディア企業です。既に資金調達も繰り返し行なっており、企業評価額57億ドル近くに及ぶそうです。ウェブメディア企業としては最大です。ただウェブメディア企業というよりもマルチメディア企業という印象が強いかも。

CEOはShane Smith氏。もともとはカナダのモントリオールで音楽やドラッグカルチャーを扱うパンクなフリーマガジンとしてスタートしました。その後はオンラインメディアへ進出して購読者数を増加。その後ニューヨークに本社を移して2006年より動画をスタート。

動画はバグダットやイスラム国といった紛争地域、さらには麻薬製造の現場に突入し、普通のメディアでは中々やれない現場でリアルな取材をすることで支持を集めます。2012年にはYouTubeとパートナーシップを結ぶことでVICEの動画事業はさらに伸長。HBOでも番組を持っており、新興メディアとしては異例のエミー賞も受賞しました。

そして2014年よりはVice Newsをスタートさせ、さらに2015年には女性向けメディア「Broadly」も開始。最近ではInstagramといった流行りのSNSにもコンテンツを流通させ、Snapchatのディスカバリー番組にもVICEのコンテンツが登場しています。

そんなVICEですが、彼らは一体どうやって収益を稼いでいるのか?一つはコンテンツ販売。自社で制作した動画コンテンツを世界中のテレビ局などに販売、他にも音楽レーベルや映画などを販売することで収益を上げています。

そして二つ目がエージェンシー機能です。要はスポンサー・広告事業。VICEでは独自にクリエイティブエージェンシー「Virtue」を運営。この機能を活かして各スポンサーのためのオリジナルコンテンツを制作し、収益に大きく貢献しています。

このVirtueは動画や記事に関わらず、アプリやウェブ、ゲームといった多様な手段を用いてコンテンツを制作。またスポンサーのためにオリジナル動画ブランドを展開するなどコンテンツ制作に止まれない、VICEの広告に対する清々しい姿勢が見え隠れします。

そんなVICEのマネタイズの姿勢は「良いコンテンツを制作し、多くのユーザーを集め、稼ぐ」そんなシンプルな姿勢だけれども簡単にはいかないVICEの強みが見えてきます。


BuzzFeed

設立日:2006年
公式サイト:BuzzFeed - バズフィードジャパン


バイラルメディアとして一世を風靡したウェブメディア企業「BuzzFeed」。日本でも「BuzzFeed Japan」というのが立ち上がり、最近ではTLで話題になるなど有名になってきている印象です。

ちなみにバイラルメディアというのは主にSNSを利用して、これが多くの人にリツイートや引用されることで記事が拡散し、話題する手法を用いるメディアのことです。

日本でもバイラルメディアにチャレンジするスタートアップ企業が誕生しましたが、Facebookアルゴリズム改定などの影響や著作権の問題が影響され、今では運営するメディアはほとんどいなくなってしまいました。

当のバイラルメディアを誕生させたBuzzFeedも、著作権問題に引っかかる事例が相次ぎ、最近では記事をキュレーションする方式よりも政治や長文、ジャーナリズムといったオリジナルコンテンツを制作する方向や国際化に大きく進展しています。

そんなBuzzFeedを創業したのはJonah Peretti氏。彼はBuzzFeedを創業する前に、あの有名なウェブメディア「ハフィントンポスト」を創業しており、AOLに3億1500万ドルで売却しています。そしてその後、自身のMIT時代で経験したナイキを皮肉ったメールのやり取りが拡散したことをキッカケにバイラルを自ら生み出すバイラルメディアの創業に挑みます。

現在BuzzFeedの評価額は17億ドル前後。主なマネタイズはネイティブ広告で、BuzzFeedのメディアプラットホームと親和性の高い広告コンテンツを制作して掲載する方式です。また最近では料理動画メディア「Tasty」も好調で、BuzzFeedの大きな売上に繋がっています。


Vox Media

設立日:2011年
公式サイト:About | Vox Media: Go Deeper


日本ではあまり聞かないメディアですが、海外ではVICE、BuzzFeedと並ぶ勢いのあるメディア企業と評されています。

このメディア「Vox」の主な特徴は各分野に特化したメディアブランドを保有しており、他とは違うリッチなコンテンツが魅力的です。要はバーティカルメディアを多数運営している企業です。日本ではナタリーに近いかもしれません。

もともとは前身となる企業「Sports Blogs,Inc」が2003年に設立され、その後VCより資金調達に成功し、現在は10億ドルの評価額がなされています。創業者は4人いてMarkos Moulitsas氏、Joshua Topolsky氏、Jerome Armstrong氏、Tyler Bleszinski氏が共同創業しました。


Voxが運営しているメディアは様々で、スポーツ専門のメディア「SB Nation」アメリカとカナダの不動産情報を取り上げる「Curbed」テクノロジー専門のメディア「The Verge」ゲーム専門のメディア「Polygon」食事を中心として取り上げる「Eater」ファッションやスタイルを中心に取り上げる「Racked」そしてニュース解説メディアの「Vox」と主に7つのメディアを運営しています。

この7つのメディアブランドの中では特に「The Verge」が大きなPV数を集めており、そこに続くように「SB Nation」「Vox」がPV数を多く獲得しています。今後もさらにメディアブランドを増やしていることが計画されており、最近ではYouTubeやSnapchatの動画コンテンツにも力を入れています。

このように多くのメディアブランドを持つことから、Voxは自社をメディア企業とは呼ばす、「ブランド企業」と称しています。

また他のメディア企業と違う点は国際化を重視していない点です。Voxは多数のメディアブランドを持っていますが、そのメディアブランドを米国内で注力した方がチャンスは大きいとしています。また仮に国際化へ転じた場合、その国の市場に投資する場合どれだけのリターンが返ってくるのか不透明でリスクだと考えているようです。

今後もますます多くのメディアブランドを立ち上げ、そしてより多くのコンテンツを生み出していくことが期待されます。


STX Entertainment

設立日:2014年
公式サイト:STX Entertainment


正直謎すぎる企業です。事業としては映画製作で、設立年代も最近ですね...企業評価額は15億ドル前後と思っていたより高め。ただいくら検索しても情報が全く出て来ません。なぜだ?

投資先にはTencent、TPG Growth、 Hony Capitalがいるそうで、テンセントが出資しているのは驚きです。

創業者はRobert Simonds氏で、中国市場とも大きな関わりがあるそうです。事業は映画の他にもテレビやVR、音楽、動画と様々なオンラインコンテンツを製作。

他にも子会社かブランドかは不明ですが「STXfilms」「STXtelevision」「STXdigital」「STXinternational」といった関連事業を行なっています。

さらに調べてみると香港取引所で上場を申請しており、実現されれば出資者のテンセントと香港大手のPCCWがSTXのためにスタジオを建設するとか。優遇されているなぁ...

ちなみに上場が達成されれば25億ドルの評価になるそうです。

他にも中国EC大手のアリババとも提携して映画を製作しており、中国市場との接点が大きい印象が挙げられます。

また映画事業が中心ですが、収益のほとんどはストリーミングサービスからとも言われ、スタジオにも盛んに投資していることからゴリゴリの映画企業であることはとりあえず伺えます。映像見るとジャッキー・チェーンっぽいのが映っているし、映画とゴリゴリ中国なんだな、という感じです。

そしてSTXが製作された映画は

「SECOND ACT」「the upside」「THE BEST OF ENEMIES」「PEPPERMINT」「THE HAPPYTIME MURDERS」「MILE 22」「ADRIFT」「I Feel PRETTY」「GRINGO」「MOLLY'S GAME」「DEN OF THIEVES」「THE FOREIGNER」「A BADMOMS CHRISTMAS」「VALERIAN」「THE CIRCLE」「THEIR FINEST」「THE SPACE BETWEEN US」「THE BYE BYE MAN」「The EDGE of Seventeen」「BAD MOMS」「DESIEBTO」「FREE STATE OF JONES」「HARDCORE HENRY」「THE BOY」「SECRET IN THEIR EYES」「THE GIFT」

と思っていた以上に数多くの映画作品を製作しています。

中には日本でも上映され、僕自身も観たことある作品も。あとジャッキー・チェーンが出演している作品本当にあった。

ちなみに公式サイトを見ると中国語あるし、「2つの最大のエンターテインメント市場 - 米国と中国を橋渡しするために建てられました」とかサイトに掲載されているので、やはり中国を意識したスタートアップ企業っぽいですね。


まとめ

合計4社です。この中でやはり異色ながら最大のメディア企業は「VICE」ですね。日本でもVICEを見習ってスタートアップ企業を立ち上げる動きがチラホラ伺えます。例えば「ONE MEDIA」「lute」はVICEの影響を強く受けていそうです。

そして4社の中で共通しているのは「動画」です。やはりウェブメディアが起点となりながらも「動画」という重要素材を抜かすことができないのは何処も同じようです。

BuzzFeedもウェブメディアの収益よりも動画メディアの方が収益を大きく稼いでおり、VICEも今では動画事業が中心となりつつあります。ブランドメディアのVoxもウェブに力を入れても動画メディアを幅広く展開してます。

そしてメディア企業とはこれまた異色のSTX Entertainment。映画製作で評価額15億ドル、さらには香港で上場予定とペースがすごいですね。映画スタートアップなんて登場できるんだ、という印象です。資金とかどうなってんだろう?ドラマ製作でも多額の資金が必要なことをBratで観たような気がするけど。


即座に「IGTV」に対応した動画スタートアップ国内・海外14選まとめ - 開戸日記


最近ではその企業の運営している番組が欲しいから買収するという事例もあるようで、動画やメディア、コンテンツ周りのお金の動きはますます加速していきそうです。

プライバシーポリシー