開戸日記

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絵師の価格表示がブラックボックスな件について

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最近、無料で絵を描いてもらおうとする行為、絵師に対するリスペクトのない言動や荒らしなど、礼儀の欠ける対応が多く見受けられます。(主にTwitterで)もちろん、自分もそれに対する憤りがありますが、それを前提として一つ疑問に感じる部分もあるのです。


それは絵師の仕事に対する「価格表示」がブラックボックスという問題について、です。


実際にTwitterのプロフィールにはお仕事を募集している絵師の方が多くいます。(※この場合「絵師」はマンガ家、イラストレーターなど絵に関わる多くの方を対象とします)

ただ、プロフィールを覗くとあることに気が付きました。それはどの絵師も仕事に対して価格を表示していないのです。

確かに、絵の仕事などクリエイティブな職業に対して価格表示を設定するというのは難しい問題があります。

しかし、これでは仕事を発注する側としても応募しにくい難点があります。その難点をまとめると以下の通りなると考えます。


絵師の価格表示に対する難点

絵師に対する仕事の相場がわからない

価格表示が表示されていない絵師の方が多いので、絵師に対しての仕事の相場が分からない問題があります。

となれば、絵師に対して一件の仕事に対する価格の提案が出来ません。いえ、出来ないというか難しいです。どのくらいの料金を払えばいいのか、分からない前提で交渉しなくてはなりませんから。


その仕事に対して払う価格の理由が不明

例えば一枚の絵に対して1万円という条件があるとします。しかし、なぜその一枚の絵に1万円を払う必要があるのか、絵師ではないクライアントから見たら理由が不明です。

仕事を発注したいクライアントは、普通よりも高く仕事を発注することを嫌うからです。納得できない理由でお金を払いたくありません。


あなたも何か欲しくなった時、安い物が欲しいでしょう。それが通常よりも高い場合、納得のいく理由を求めるはずです。

分かりやすい例で言えば、自動販売機の飲み物は安いかもしれませんが、山頂で買う飲み物は高くなります。何故なら平地と山頂とではコストに差があるからです。


絵師の努力背景が見えない

絵を描くこと、描き続けることには多くの努力があります。あったはずです。少なくとも楽ではないし、大変だったかもしれません。

ですが、その努力背景が見えてきません。
一体どれだけ頑張っているのか?本当は絵を描くなんて趣味なんだから、楽しているのでは?なんて思う輩もいるでしょう。

決して楽している訳がありません。
が、絵師がどんなに大変で、どんなに頑張ってきたか、その努力背景が見えにくい問題があります。


例えば、今や有名人となったHIKAKIN。
彼はYouTuberとして人気が高くなるにつれて、知名度が上昇しました。お金もいっぱい稼げるようになりました。

が、世間から見たら「楽して稼ぐ、調子に乗っている人間」というイメージです。多くの人がそう感じていたでしょう。だけど今の人は、そう感じている人の方が少数です。

何故なら、それは彼が頑張ってきたことを知っているからです。寝る間も惜しんで必死に動画を上げて、企画して、作ってきたことを、ファンに対するサポートなど、その努力が見えてきたからです。

HIKAKINの努力背景が見える動画の一例


これはあくまで一例なので、単に有名になったから、YouTuberという職業が一般に認知されたからとも見えます。ですが、例を挙げるならばまだまだ他にもあるはずです。

他で挙げるのならばエンジニア。
彼らはコードを一生懸命に書いていますが、一般人から見たら、ただ座ってPCに文字を打つ楽な仕事だという認識の方もいるでしょう。


話が脱線しましたが、絵師に対して努力背景が見えないのも課題の一つではないでしょうか?


コミュニケーションコストの問題

多くの絵師が「DM」か「メール」で仕事を募集しています。つまり「交渉」という段階が必要になります。

正直、仕事の依頼から納期、料金の交渉まで、その場その場で逐一メールとDMで行うのは手間がかかります。

彼らは「お気軽に」と言っていますが、メールとDMの段階で既に、お気軽ではありません。


一般人の感覚差

あくまで例ですが、一枚の絵に1万円払うのに高いと感じる理由は、本屋で売っているコミックや雑誌、イラスト本ならば一枚1万円よりも安く購入できるという感覚差があるかもしれません。

つまり一般人の感覚差から見て、絵に対して仕事をする人間と感覚的に違う部分があると思います。

それは「教育差」だったり「能力差」だったりとも言えるかもしれません。誤解してほしくないのは教育差や能力差は「絵師に対して仕事を発注する仕事」に対しての教育差、能力差のことを指します。

通常、絵師に対して仕事を発注する側なら適切な価格交渉が得意でしょう。それは絵師の仕事に対しての感覚、職業に対しての学び(教育)、培ってきた能力があります。


しかし、これはあくまで「慣れている側」の人間です。新たに誕生した企業、彼らがWEBメディア事業を行うとしましょう。絵師に対してノウハウも何もない彼らは「一般人」と同じ感覚差、教育差、能力差です。

そんな彼らが、どの程度の価格で絵師は仕事を引き受けてくれるか分かりません。そして心配性の彼らはボッタクられるのではと疑心暗鬼にもなります。そして出来る限り安く発注したいと感じます。

そんな彼らは絵師から見たら評判の悪いクライアントに成り下がるでしょう。そんなクライアントから仕事を引き受けたくないと感じるかもしれません。そして仕事を断る絵師が増えます。彼らは絵師に仕事を発注できない状態が続くことになります。

彼らは悪かったのかもしれません。ただ言い訳をするならば、彼らは仕事に対するノウハウが足りなかった一般人のままだった、ということになります。


ギャップが埋められていない

絵師は仕事を高く引き受けたい。対してクライアントは仕事を安く発注したいというギャップが存在します。それをDMやメールで交渉するとなると、スムーズにはいきません。

何故なら互いに求めるものが違うからです。


悪循環というループへ

以上のように、価格表示を行われないと、これらの難点が考えられます。

そして、これらの問題、課題はクライアントが新規発注を行うハードルを自然と上げてしまう行為になります。さらに、新規クライアントの獲得を困難にすることも考えられます。

そのため絵師に対して仕事が来ない、絵師が疲弊するという悪循環に陥っているのではないかと自分ではそう考えるのです。


ココナラの例

絵師の間で話題…少なくとも良い方向で話題になっているサービスではありませんが、ココナラを例に挙げてみたいと思います。

ココナラは、誰でも自分のスキルを販売できるプラットホームです。

そこに出品できるのは占いやプログラミング、コンサルの他に、「絵を描く」ことも出品できます。

ここで問題になっているのが「低価格」であるということ。実際にココナラを見てみると「5000円」や「2000円」、さらには「1000円」で絵を描いてもらうことが出来る点です。

これが絵師に仕事が来ない、絵師を困らせる一つの問題だと叫ばれていますが、僕が見たいのはそこではありません。

ココナラは「低価格」で絵を描いてもらえるクライアントのギャップを埋めているというメリットもあります。

しかし最大の特徴は明確な価格表示がされている点と、それに対する理由が明示されている点です。

このお陰でクライアントは料金を他の絵師と比較した上で検討し、なおかつ理由が明示されているため料金に納得することが出来ます。そのため、絵師とクライアントのギャップを埋め仕事を気軽に受注、発注する仕組みを構築しているのです。

さらに、理由や細かい仕事の内容、取引上のルール、納品についてまで内容欄に記載されているので、交渉の段階で前提をわざわざ話すコミュニケーションコストを下げることが出来ます。

メールやDMという煩わしい手段を使わずチャットで交渉するなど、仕事の発注・受注に適した環境があります。


が、その分手数料を取ります。
デメリットといえば、ここが大きいかもしれません。


まとめ

誤解してほしくないのは、今回は絵師を批判したい訳ではありません。ただ疑問に感じたことをありのままに、価格表示を行わないことが一つの課題ではないかと考えて執筆した記事です。

そして、今回の記事を執筆して他に「やり方」があるのではないかとも考えています。

「絵」というクリエイティブな職業でも、それを仕事にする上でビジネスを行うという前提は変わりません。ならばビジネスを行う上で優位な方法を構築するのも手段なのではないかと考えます。

三井の創業者は越後屋で「正札現金掛値なし」という値札を表示する仕組みで繁盛しました。

なので価格をブラックボックスにせず、表示してみるのも手ではないかとも考えます。ただ自分の知識と経験が不足しているため、それを行った場合のリスクが想定できません。


けれど、クライアントは仕事を発注するなら安くしたい、けれども絵師は高く引き受けたい。そのギャップを埋める、一つの何かがあればいいと感じています。

絵師をより仕事に結びやすくする、サービスの仕組みがあれば…僕はそう考えます。

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