実は、本当の意味でシェアリングエコノミーである「ライドシェア」を始めたのはUBERではありませんでした。
最初にライドシェアを始めたのはサイドカーという企業。UBERの成功を見ていた人物が普通の人でも運転手になれるサービスを開始しました。
しかも料金は取らず、お礼としてお金を払えばいいだけ。法律にはグレーでしたが、実際には車の相乗りをするカープールという制度がありました。そこに目を付けた訳です。
この企業がライドシェアのビジネスを誕生させた後、遅らせながらLyftは「相乗り」のライドシェアサービスを始めます。
そもそもLyftは最初からライドシェアのサービスを立ち上げていた訳ではありませんでした。社名もLyftではなく「ジムライド」という社名。名前の成り立ちには起業のキッカケを作った「ジンバブエ」から来ています。
サービスは車の空きスペースを埋める「カープール」というサービス。長距離の旅行や通勤という限られた手段にしか使えないサービスですが、資金調達にも成功して拠点もシリコンバレーに移します。しかし、このまま事業を進めても大した規模にならないとピポットを企てることに。
そして生まれたのが「Lyft」。
当初は「ジムライドインスタント」というサービス名でした。
サービスには法律的な懸念がありましが、顧問弁護士に相談したところ問題なしとの判断を下し、早速スタート。
Lyftの特徴は「安心感」と「親しみ」です。
・後ろではなく「助手席」に。
・こぶしを突き合わせる。
・車にはピンクのつけ髭を付ける。→バズる。
これらの理由からLyftは急激に成長。UBERも黙ってはいませんでしたが、カラニック前CEOの意見によれば職業運転免許を持たずにライドシェア事業を行うのは違法であると考えていました。
事実、当時のUBERは職業運転免許を持つことがサービスを行える前提になっており、Lyftのようなサービスはこれまで戦ってきた規制当局に潰されると考えていました。
トラビス・カラニック氏の思い通り、Lyftとサイドカーに停止命令が下されます。UBERもこれを機に、規制当局に対してLyftやサイドカーに対して辞めさせろと迫ります。カラニック自身も規制当局に対して「Lyftを叩き出せ」と言うほど。
しかし結果的にLyftとサイドカーは認められます。条件としては以下の通り。
・自動車保険加入の証明を示す。
・身元確認を行う。
・安全対策を行う。
・交通違反歴の確認。
など。
結果的にLyftはサービスを公認され、積極的に、されど慎重に広げていきます。UBERは、結果的に7ヶ月間もLyftの勢いを止めることなく見ていただけという結末です。
カラニック氏は悔しさを滲ませていますが、同時に彼らが優れた起業家であることも認めています。新たにライドシェアリングというフィールドを切り開いたことにも感謝しています。
UBERはその後、Lyftの後を続くように元々展開されていた「UBER X」にライドシェアリング機能を取り入れて展開を進めていきます。
LyftのCEOからは「クローン」だと、なじられていますが……
サイドカーはサービスを積極果敢に攻め過ぎたことによりショート。そして現在、米国でUBERとLyftの2つのライドシェアリングサービスが展開する事態へとなっていきました。
Lyftの評価額は96億ドル。対してUBERの評価額は680億ドルです。雲泥の差を生み、各国にサービスを展開するUBERとは違いLyftは米国にての事業に集中しています。
しかしその親しみ感のあるサービスは、米国で人気を集めています。米国へ旅行に行った方はUBERよりもLyftの方が気遣いが良いと、サービスの差が出ています。
騒ぎに揺らぐUBERですが、今後ライドシェアの覇権を握るのはLyft…という結末になる可能性も、もしかしたら少なくないかもしれません。