開戸日記

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YouTubeに長編オリジナル動画コンテンツを配信するスタートアップ「Brat」とは?

ONE.MEDIAやluteなどサードウェーブ動画コンテンツの台頭、ならびにVICEなど。バイラル的なモデルでPVを稼いでいたメディアとは違い、「質」を重要視するメディアの躍進から、動画の常識が変わりつつあります。

そんな中、アメリカでは長編のオリジナル動画コンテンツをYouTubeといった既存のプラットホームへ配信するスタートアップが誕生しています。その名は「Brat」。Z世代向けに響くコンテンツを、テレビとはまた違ったプラットホームへ配信する...今までとは違う時代が、すでに近づいてきているのかもしれません。

今回は、そんな時代を切り開く可能性を持つ「Brat」について調べてみました。


Brat設立の経緯

Bratを創業したのはRob Fishman氏とDarren Lachtman氏。

彼らはすでに一度成功しており、2013年に創業した「Niche」という企業をTwitterへ5000万ドルで売却しています。NicheとはTwitterInstagramインフルエンサーと広告主を結びつけることで、インフルエンサーに収益化の機会を与えていました。

また、その前にもRob Fishman氏は「Kingfish Labs」という企業をBuzzFeedに売却しています。

いわゆる「シリアルアントレプレナー」とも見える彼らは、Nicheの売却後、Fishman氏は2016年秋まで同社で働き、またLachtman氏は2017年7月まで働きました。

その後、2人で「Brat」を起業。Bratを設立した理由についてFishman氏は「YouTubeで人気のあるコンテンツよりも、TVで作られるコンテンツの方が多額の費用を費やしている」と語っています。

事実、2016年秋の調べによると YouTubeNetflixの両方が米国10代の若者世代でTVを上回る結果になりました。そこで彼らはYouTubeなど10代、いわゆるティーン向け、Z世代とも言えるのでしょうか?

その世代に向けて長編オリジナルドラマを制作、そしてYouTube上へ配信を開始しました。配信のメインはYouTubeですが、マーケティングチャネルとしてInstagramTwitterを利用しています。

YouTubeには現在220万人のチャンネル登録者数を持っており、Instagramのフォロワーは105万人。Twitterのフォロワーは6万人を超えています。(Twitterだけ少ない...)


Bratとは?コンテンツの特徴について

Bratのコンテンツの特徴は1作品70分、全てオリジナルで、登場してくる音楽もオリジナル。制作されるコンテンツは一つ50万ドルの費用がかかり、ただし効果は絶大。平均鑑賞時間は30分で、初のヒット作「Chicken Girls」は500万PV達成後、その後1000万PVを達成したとか。

先ほども述べた通り、コンテンツはとにかく質を重要視しています。コンテンツに出てくる架空の学校「Attaway High」を実際の高校を三週間レンタルして撮影したほど。登場する人物も全員若い。10代か20代くらいの人がメイン?

Bratが目指すのは優秀なコンテンツ制作者を雇い、TV同等の質の高いコンテンツをティーン向けに提供すること。そして配信するのはTVではなく「YouTube」です。もっとも大きな特徴は、やはり、そこでしょう。

また、Bratはすでに8ショー(シリーズ)の制作が済んでおり、今後は30ショーまで拡大していく予定になっています。


配信チャネル

現在はYouTubeInstagramを中心に配信されています。確認してみたところ、Instagramが新たに提供した「IGTV」にもコンテンツを配信しています。それからTwitterも。

今後はSnapchatのディスカバリーチャンネルや、Facebook Watchへのコンテンツ配信の可能性があることを示唆しています。確実ではありませんが...


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マネタイズの方法

Bratはまだしっかりとしたビジネスモデルが確立されている訳ではありません。現状はYouTubeの広告プログラム、それとサイトを確認したところ、オリジナル商品を販売しています。(3点くらいですが...)今後は営業担当者を雇い、スポンサーシップを募る考えのようです。

Fishman氏によれば、「私たちはコンテンツの所有者であり運営者でありたいと考えています。当社の主要な能力はネットワークを通じてブランドを構築し、ネットワークに対して直接広告を販売する形を取るつもりです。」と語っています。

また「私たちはコンテンツを生産しますが、サービス業には進出しません」とも語っています。

おそらく今後もプラットホームを独自で開発する気はなく、コンテンツとブランドの企業としてマネタイズに活かしていくつもりだと考えられます。


資金調達は?

Lerer Hippeau Ventures、Advancit、Box Group、Chernin Groupから250万ドルの資金を調達に成功しています。さらにAdvancit Capital、Kevin Durantなどから1000万ドルの資金調達に成功。さらにさらにAnchorage Capitalから3000万ドルの資金調達に成功しています。

累計4250万ドル。アメリカの規模感が分からないので高いのか低いのかイマイチ判断出来ませんが、日本円だと42億5000万円くらい?創業から1年弱で42億以上とは高い...delyよりは安いのかもしれないけれど。

ビジネスモデルが確立されていないため、コンテンツ制作費に莫大なお金がかかります。コンテンツはワンシーズンごとに「数十億ドル」もかかるらしく、お金はあっても足らない現状が見えます。

ただ裏を返せば、それだけリッチなコンテンツがYouTubeで視聴できることになります。他でYouTubeに向かって多額の費用をかけてコンテンツを制作する企業がいくらあるでしょうか?


まとめ

YouTubeにこれほど資金をぶっこんでコンテンツを作り込んでいる企業があるとは驚きでした。にしても、米国の起業家はスタンスが軽いですね。

起業から売却して、また起業して売却。そしてまた起業とは。視聴する空間が徐々にTVからインターネット空間へ移り変わっていく昨今。ここに大きく注目している企業はプラットホーム企業だけでなくコンテンツを生産してブランドを築こうとする企業もまた然りでしょう。

今後は徐々に海外、そして国内でも増えていきそうな予感がします。ただプラットホームを開発・運営するよりも容易ではあるので、コンテンツの質、コンテンツの量、先行者優位、ノウハウ、ブランディングとか色々が、今後多く発生する(と思われる)コンテンツ企業との戦いの鍵になるかも。

いづれにしても、先行して多額の資金ぶっこんだ方が勝ち目なのかな...?

海外ではBratしかYouTubeにぶっこんでいるスタートアップが見当たらなかったけど、大手とかやってそう。それこそVICEはドキュメンタリーの王様だし、他にも色々と。大手入ってくるのは怖いな...大小での激戦の予感。

食の次は「長時間『質』重視コンテンツ」かな?今後どのように動画業界が変化していくか、まだまだ動画の波は終わりそうにありません。以上。


Brat公式サイト
Brat


参考
Brat and Rob Fishman want to make TV for teens in the YouTube era

With $40m in backing, Brat is trying to recreate TV for teens - on YouTube - Digiday

Rob Fishman used to connect young stars with advertisers. Now he’s making videos with them at his new startup, Brat. - Recode

Twitter Buys Niche, An Ad Network For Vine Stars - Business Insider

'Chicken Girls' maker Brat raises $30 million to produce online shows for teens

Brat - Official Store

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